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イラクの少女  ~  みやざきあやこ

黒い瞳を大きく開けて
真っ直ぐ こちらを見ているイラクの少女
彼女の肩には 銃弾に打たれた傷がふたつ
いたいたしく 口をあけている。
彼女の目は 涙に溢れてはいない
歯を食いしばっているその目の奥に 怒りの炎がゆらめき
まっすぐ わたしたちに問いかけてくる
「なぜなの! なぜこんなめにあわなければならないの!」

彼女はまだわずか4歳
ファルージャで家族と幸せに暮らしていた
米軍がファルージャを包囲し、空爆が始まったとき
一家6人は車に乗って 街の外へ避難しようと走り出した 

ひとりも逃してなるものか!
米海兵隊は 車めがけて発砲、たくさんの銃が火を噴き
あっという間に、
お父さんも お母さんも 兄弟たちも
彼女ひとりを残して みんな 死んでしまった
ひと声も 彼女を呼ぶひまも なく

彼女は目を閉じることが出来ない
その目の中は 目の前で倒れた おとうさんとおかあさんと 兄弟たちでいっぱい
涙で流しだすことも出来ない
目の中に 焼きついてしまったから
声をあげて泣き叫ぶことも出来ない
撃たれた痛みも感じないほど
こころが 凍り付いてしまったから

大きく見開かれた黒い瞳は
悲しみと怒りの炎をゆらめかせて
するどく わたしたちに 問い掛けてくる
「なぜなの! だれなの! なぜなの! だれなの!
わたしたちをこんなに苦しめるのは!」
今日もまた孤児が増えた
命をかけて孤児たちを救おうと出かけた人を 反日分子などと呼び
傷ついた孤児たちを次々に生み出すことへの援助を 人道支援と呼ぶ
子供たちを殺し孤児にする手助けのために大量の血税を使い
苦しむ人々や子供たちを救おうとした日本人のためにはお金を出し惜しむ
こういう人たちが愛国者だ なんて!

人道とは何か!
これまで多くの権力者は 「そこのけそこのけオレ様が通る」と
オレ様 の通る道を 人道 と呼び
その 人道 の露払いを 人道支援 と言ってきたのではないか
そして今も変わらず ね 小泉さん

イラクで人質となって解放された3人と2人の日本人たちは
本当の「ひとのみち=人道」とはいかなるものかを世界に問いかけた
あのイラクの少女の目線で

今もあの黒い大きな瞳は問い続ける
「なぜなの! だれなの! いつまでくるしめれば気がすむの!」と

今日も砂漠には 赤い月が昇る。

*2004年4月20日の朝日新聞夕刊に載ったイラクの少女の写真を見て
日本ジャーナリスト会議 宮崎絢子

2004.5.2初出
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プロフィール

彩声

Author:彩声
宮崎絢子


株式会社 彩声
代表取締役社長

ボイスコンサルタント

元テレビ東京アナウンサー。
現役時代は報道番組の司会やプロデューサーとしても活躍。
定年退職後、ミヤザキ式ボイストレーニングを構築し、2000年に教室をオープン。
広く、声の重要性を伝えるために活動中。

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