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何気なくあいさつできること

 今年の桜はなかなか見ごたえがありましたね。
 満開になった桜がすぐには散らないで、雨や風に耐えて持ちこたえてくれたからだと思います。暖かい日が続かなかったのが幸いしました。本当に「禍福はあざなえる縄の如し」で、人々にとっていささか厳しい春の寒暖の差が、桜を長持ちさせ、その桜をめでる心が、寒暖の激しい気候を乗り越える力にもなっている、人々に生きる力を与えてくれているということを感じさせてくれました。
また散り残った桜も、なんとなく健気で、萌え出ずる若葉を待つやさしいお姉さんのようにみえました。

 日本中を桜の花で埋めるこの季節は、人々の心をもっとも穏やかにしてくれるはずなのですが、自然を観ず、自然を感ずることの少なくなってしまった現代の日本人は、身体も心もひしゃげてしまったのでしょうか。相変わらず心胆寒むからしめる事件や事故が後を絶ちません。
 今日も出勤途中でなんとも腹立たしいというか情けないという出来事にぶつかりました。
 (私はいつも苦言を呈したり、嘆いたりしてしまうのですがこれも年寄りの冷や水でしょうか。)

 またあのサンダルをカンカン鳴らして歩く季節になりました。若い女性の多くがミュールサンダルの音を響かせて駅の階段を上り下りします。あの音は頭に響いてトテモ苦しい騒音です。
履いている本人はあまり気にならないのでしょうか?人に苦痛を与えていることをまったくきづかないのでしょうか?それともすでにあの音を快感として受け入れているのでしょうか?一度聞いてみたいものだと思っていますがーー。

 そんなミュールを駅の階段を上っていた若い女性が引っ掛けて落としてしまいました。
後ろから上っていた若い男性がそれを拾って差し出しました。若い女性は黙ってそれを足で引っ掛けるようにして履き何も言わずに歩き出しました。私は二人は知り合いかと一瞬思いました。しかしその男性も黙ってスーと別の方向に歩いていってしまい、靴を拾ってもらった女性は、にこりともせず、頭も下げず、ありがとうとも言わず、ルイヴィトンのバッグを掛けた肩をゆすって、ひきずるようなミュールの音を響かせて去ってゆきました。

  私はあっけにとられました。なぜ「ありがとう」の一言がいえなかったのだろう?なぜちょっと頭を下げて感謝の気持ちを伝えることをしなかったのだろう?
これが今の日本の若者の心の硬さなのだろうか?いろんなことを考えさせられたと同時に、とても暗い気持ちになりました。

  私はいつも、(このコラムにも何度か書きましたが)咄嗟に声を出すことの大切さを説いています。これはわたしたちの命の営みであるとともに、コミュニケーションの基本であります。
物事を平和的に解決するために欠かせない力になるものです。何気なく、すっと気持ちよくあいさつできること、人の好意や善意をキャッチできる能力を養うことこそいま教育に(学校教育だけのことではありません)求められているのではないでしょうか。

 気持ちよくあいさつできることが自分にとっても人にとっても、生き生きとした人生を送る第一歩であることを是非わかっていただきたいと思います。
そのためにも、すっと声が出るようになるボイストレーニングは大切です。


2006.4.10初出
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プロフィール

彩声

Author:彩声
宮崎絢子


株式会社 彩声
代表取締役社長

ボイスコンサルタント

元テレビ東京アナウンサー。
現役時代は報道番組の司会やプロデューサーとしても活躍。
定年退職後、ミヤザキ式ボイストレーニングを構築し、2000年に教室をオープン。
広く、声の重要性を伝えるために活動中。

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